私はりんご飴があまり好きではない。そしてあれを好きな人をあまり知らない。
というかりんご飴を欲しがっている人をあいつしか知らない。
アイテムとしては可愛いが、いざ食べるとなるととても困る。
祭りの喧騒に目が慣れてくると魔法が解けたように味の単調さが際立ってくる。
だが、あいつは好きらしい。出店の食べ物の中では、かなりのコスパだ!と息巻いていた。
・・・男子高校生は質より量だ。
「みんなで祭りに行くから行こう曲もできた」
どっちが目的か分からないが、どちらも興味があるので行くことにした。
花火を見たかった。
久しぶりに行ったお祭りは意外と楽しくて、あっという間だった。
出店の明かりが綺麗で非日常を感じるには十分だった。
「今回は、忘れられないことと言いますか、なんというか」
残りは花火を待つのみとなった頃だった。
この言い訳みたいな前説から曲を聞くという流れはいつもと変わらない。
彼は自分で作った曲を私に聞かせてくる。些細なことがきっかけだったが、何かを作っている人なんて私の周りにはこの人だけなので実際、楽しみだった。
「りんご飴がさ、うまいんだけどちょっと甘すぎるなと思ってきたんだよ。うまいけど。そんな曲。」
全然わからん。恥ずかしがるせいで、毎度のことだが回りくどい。
2か月前まで、彼には彼女がいた。深くは聞かなかったし、聞きたくもなかった。
一つ年下の後輩で肩口まであるサラサラの髪の女の子。八重歯が特徴的。
その時も放課後、教室で曲を聞かせられていた時だった。
突然彼女と別れたことを話してきて、びっくしてその時の曲はよく覚えていない。
窓から外を見る彼に、なんの感情も読み取ることができない。
夕日の影が悲しそうにさせているが、なんとなくそれだけではない気がした。
彼は表情が読みにくい。
私は彼の曲が好きだ。
彼の心が覗けるから。
私は彼を見て楽しんでいる。フラれる姿も、悲しみに暮れる彼を。
道徳的ではないと思う。でも、それを見たいのは彼だけ。
私と彼しか分からないものが音楽を通して通い合っている。
それが、喜んではいけないことだとしても。
「泣きながら作ったの?」
「号泣」
私は笑った。
彼も笑った。
あいつが作った他の曲「ダンスミュージックは現代のブルース」
https://nico.ms/sm37362348絵:ぼんでぃ様
https://twitter.com/bon_deiミックス・マスタリング:さぶろう様
https://twitter.com/saburousan3263
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