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sm37978861「お前がアレスか?」
アレスは突然呼び止められて顔をしかめた。今までの経験上馴れ馴れしく呼びかけられてロクな目に合ったためしがない。舌打ちをしながらアレスは振り返った。無視してもよかったがその声にどこか体の奥底からむず痒いものを感じたのも事実だ。呼び止めた人物を確認してアレスは記憶の引っ掛かりを覚えずにはいられなかった。同じ顔をした二人の少女。違うのは服と髪の色だけ。それと妙な訛りのある言葉遣いだ。俺はこの二人とどこかで会ったことがある……?
「うわ、エルトシャンそっくりやんけ!」「アレス、アレスーッ! おっきくなったねもぉーッ!」そう言って二人は弾丸のような速度で飛びついてきた。鳩尾に二人分の体重を受けてアレスは一瞬意識が飛んだ。受け身も取れず押し倒される。生身の体で鎧にぶつかったらただでは済まないだろう、とアレスは心配したが心配するべきはそちらではなかった。鎧が凹んでいる! 特注の漆黒の鎧が! 毎日寝る前に磨いているお気に入りの鎧なのにッ! ただでさえ武器の修理で金がないというのにッ!! そもそもなぜこの二人は無傷なんだ!! ――そんことよりもだ。
「やめッ……やめろォーッ! こんなところリーンに見られたらマズイだろッ!」こんな姿を誰かに見られたら誤解を受けることは必至だ。声を荒げるとピンクと青の猛獣はそろって同じ方向へ指をさした。そこにはリーンが木陰からうらやましそうな目を向けているではないか。「リーンッ! これは誤解だ! 俺は無実だ! 助けてくれ!」リーンを指さしていた二つの手が息ぴったりに手招きをする。するとリーンは表情を輝かせ走ってきた。そして勢いをひとつまみも緩めることなくアレスに抱き着く。美少女三人に抱き着かれてアレスは心の底から泣きたくなった。
やっぱりロクな目に合わないじゃないか、と。
という一幕はたぶんなかったと思うので忘れてください。
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