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sm38735098)
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
ある日、彼にはすこし調子の良い日があった。
外に出てみようかと、彼は重い腰を上げ、
表に出ることにした。
ひどく人工的な青に困惑しつつも、
緑を撫でる風が心地よく、導かれるまま
ふと、賑やかな催を目にすることとなる。
あれは祭りというものかもしれない。
以前見た記憶があった。
現実世界で目にするのは初めてだ。
足を踏み入れると、屋台がずらりと並んでいた。
綿菓子や、見たことも無い食べ物が、
絶え間なく視界を彩っている。
鮮やかな夢に、汚されたパレット。
眩暈のような現実。
あまりに唐突な非日常。
おや、と思った。
気付くと彼はとある屋台の前にいた。
意図したわけではない。
彼の目はその屋台にくぎ付けとなった。
お面だ。お面が売られている。
そしてその中には、かつて、自分が心を奪われた
あの主人公のお面がひっそりと並んでいた。
5歳の時、私を虜にして、そして離さなかった、
あの主人公だ。
これください。
彼の手にはプリキュアのお面が手渡され、
そして、それは彼の顔面にゆっくりと装着された。
するとどうだ。
忘れていた感情がのけぞるほどの勢いで噴き出し、
限られた視界から見える世界は、
5歳の時、見えていた世界そのものではないか。
見渡す限り、このお面を被っている者は自分以外誰一人いない。
途端に大粒の涙が溢れ出した。
鼻水やら、よだれやら、もはや収集が付きそうもない。
だが何も問題はなかった。
プリキュアの裏に隠されたおぞましさを、誰が気付くものか。
パレットは次から次へと人を飲み込んで、
いずれ来る静寂に抗っている。
この恐るべき奇人の行方は、誰も知らない。
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