――長い夢を見ていた。<br>「……トレーナーさん、……キタルのトレーナーさん」<br>この声はマチカネフクキタルだろうか。自分を呼ぶ方を向く。<br>「私はシラオキ。あなたに会うためにフクキタルの姿を借りています」<br>彼女はついにおかしくなってしまったのか。<br>「さては信じていませんね?まあ、いいでしょう。<br>……率直に聞きますが、あなたにとってフクキタルはどういう存在なのでしょうか」<br>どういう存在と聞かれても。トレーナーとウマ娘、ともにレースの頂点を目指す関係とでもいうのだろうか。<br>そんな考えを読み取ったのか、彼女は呆れたように、そして諌める口調で続けた。<br>「想う相手のために、自らを偽って――何が『トレーナー』か」<br>その瞬間脳内に溢れ出した、たしかに存在する記憶――<br>彼女の笑顔を見ていると元気が出てくる。<br>そっけない態度で自分を誤魔化してきたが、<br>まるでレースのようにグイグイと差し迫ってくる彼女といる時間が本当は楽しかったのだ。<br>マチカネフクキタルの笑顔をずっと見ていたい。<br>「その気持ち、直接伝えてはいかがですか」<br>そう言うとシラオキ様は耳に口を寄せ――<br><br>「ぎゃああああああ!!」<br>――っ!?<br>「やっぱり取れませんでしたぁ!!誕生日だというのに、今日は大凶です!!」<br>そうだ、今日はクレーンゲームに来ていたんだ。なぜかは思い出せない。<br>「もう一度やってみるか」<br>「へ!?」<br>驚いた表情でこちらを見ている。なにか変なことを言っただろうか。<br>「……いえ、クレーンゲームはやめましょう。今日はもう、プレゼントをもらっちゃいました」<br>よくわからないことを言われたが、ともにゲームセンターを後にした。<br><br>そういえば、まだ伝えていなかった。<br>「誕生日おめでとう。これからも素敵な笑顔をお願いできるかな」<br>「もう、どうしちゃったんですか。そんな歯が浮くようなセリフ……」<br>いまいち真実味がなかったらしい。彼女の手を取って続ける。<br>「今までありがとう。君の笑顔のおかげで戻ってこれたよ、だから――」<br>「最後まで言わないでくださいっ!!マチカネハルキタルになっちゃったらどうするんですかっ!<br>もう5月ですけど。って、あはは~。目からおみくじが……」<br>夕日で照らされた涙混じりの笑顔があった。<br><br>まあ、本当は戻ってこれたのは笑顔じゃなくて叫び声だったのだが。いずれ予後不良にも効くだろう。<br><br>???「うおおおおおおん!!よがっだねえええええフグギダルううううう……」<br><br>気がつくとマチカネフクキタルはトウモロコシになっていた。<br><br>前: <a href="https://www.nicovideo.jp/watch/sm38712036" class="watch">sm38712036</a>