パパはあまり競馬を見ない。だが野球中継が始まるまでのヒマ潰しに、チャンネルを切り替えて何となくそのまま流している事はあった。
テレビの中では丁度シンボリルドルフというウマが史上初の無敗の三冠馬になったと大騒ぎしていた。
「ホホー、凄いなあ。無敗なんてマルゼンスキーくらいしか知らないや」
これまた聞き慣れない名前が出てきた。
「マルゼンスキーというウマも速かったの?」
「そりゃあ速かったさ。なんせ現役無敗だったんだからな」
「じゃあ、今テレビに映っているシンボリルドルフとどっちが速い?」
「どうかなあ、パパはマルゼンスキーだと思うが…。もし世代を超えたウマたちの対決が実現したら、分からないだろうね」
それでつい、試してみたくなったのだ。
「もしもウマたちが世代を超えて、競争できる世界になったら」
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「食材の運搬、お疲れ様。そのバッジ、気に入ったなら持っててくれてもいいよ」
「あ…あれえ?こんなバッジ、いつの間に…」
メイショウドトウの肩口には綺麗なスペードのバッジが光っていた。
ドトウがルドルフ会長の謝辞を受けに行ったのを見計らったかのように、1匹のタヌキが茂みから姿を現した。
「やあ、ドラえもん。トレーサーバッジとチャートをありがとう。結局ここでも君に助けてもらっちゃったね」
皆でメルヘンランドへ行った時の事を思い出す。あの時と同じように『似てたからその配役にさせられた』らしい。ドラえもんは大分不本意だったようだが…。
「それにしても、どうしてぼくはこの世界でも普通の人間に…トレーナーになったんだろう?」
確かあの時はカメになったはず…。
「それは、この世界の人間はウマ娘に比べれば誰もがグズでノロマな種族だからだろうね。世界一足の速い人間になったとしても、大して変わらないのさ」
今度はぼくが口をとがらせる番だった。
「…本当に、いいんだね?この体はもうすぐただのタヌキに戻る」
「うん。ぼくは、この世界でウマ娘たちと生きるよ」
自分でも驚くくらい、迷い無く決意の言葉を紡いだ。
「…ふふふ、君はもうすっかり一人前のトレーナーなんだね」
…少し、思い描いていた世界とは違うけれど。
ここには確かに、レースにかけるウマたちがいる。
ほうっておけない、ウマ娘たちが。
色んな世界に、色んなウマがいるように。ぼくは色んな世界に、色んなのび太がいる事を知っている。
だけど、こんな風に別の世界で生きると決めたのび太は珍しいのだろう。
「さようなら、ドラえもん。別の世界ののび太に会う事があったら、よろしく」
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