|これは僕と君が 確かに残した 冬の記憶だ|
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「白銀」
君がいてくれたら良かった
高望みなんかは 出来なかった
これは僕と君が 過ごし 溶かした 冬の記憶だ
昔から病弱だった君は 薬と治療で日々をつないで
それでも幸せそうだった 何一つ不自由なく生きていた
たまに授業は寝て怒られちゃうし
デザートのじゃんけん必ず手挙げ
いつも力んでグーを出すから笑われていたね
十一月の朝 君は階段から落ちた
幸い 軽い擦り傷で済んだんだ 周りも心配そうに駆け寄った
「軽い貧血だろ」「帰りに病院に寄るよ」
君は苦笑いして僕の肩を借りた
窓から見えた木々は 葉を散らし始めていて
それが何故か僕の胸を締め付けた
「私はもう永くは無いらしい」 君は優しく笑ってそう言った
春を迎えることは叶わないと
「だから思い出をつくろう」「私が生きた理由を君に残そう」
これは僕と君だけが 過ごし 明かした 冬の記憶だ
十二月 隣町のクレープ屋に来た
「一番高いの食べてみたかったんだ」って君は笑って言った
次の週ふたりでカラオケに来た
一曲も歌う体力すらも無いくせに
歌うから大変だったんだよ?
月末イルミネーションを見て歩いた
予約忘れてコンビニでケーキを買って聖夜をともに祝った
初詣も君とだった
華奢な着物に 似合わない器具を身付けて
君は恥ずかしそうに笑った
君は別れ際に「楽しかったね」って笑って言った
腫れた目がばれないように笑って返した
「もう無理はできないらしい」 君は優しく笑ってそう言った
ベッドから出ることは叶わないと
雪に溶けてしまいそうな 澄んだ肌と どこまでも黒い髪が
灰に染まり 細く脆くしぼんでいった
二月の朝 君が死んだ
ドラマみたいな奇跡は起きなかった
ただ 吐く息が 白く消えた