藤田ことねと棒アイスを食べたい。
夏の暑さに参ってる藤田と「ぷろでゅ〜さぁ〜、もっと冷房強くなんないんですかぁ…?」『すみません、学園側がうるさいので冷房はこれ以上強く出来ないです』「水着になっても暑いですよぉ…」『室内で大胆ですね。スーツも大概暑いですが…』とやり取りするうち、「そだ、じゃあ一緒にアイス買いに行きましょう!」と提案してきたので学園内の購買(コンビニみたいな立地のやつ)に向かう。水着姿では買いに行けないし、一緒に歩いてると周りから「あの男、ことねちゃんと距離近っ…しかも水着姿の」と羨望と嫉妬の眼(デュエマの多色呪文のカード名みたい)で見られるので、上に軽く羽織ってもらう事とする。
買うのは1カップ300円オーバーするちょっとリッチなバニラアイスとかではなく、手頃な価格の当たり付き棒アイスを2つ。いつだったか藤田と交わした取り決めは「過剰に奢りすぎたり、高価な買い物をしすぎたりしない」。これは芸能活動による双方の実入りが少ないとかではなく、着実に結果を残していく藤田へのご褒美という事で普段実施しない訳ではないが、その頻度が増えると彼女自身が家族に対して申し訳なさを覚えてしまうという事への配慮からだ。きっと彼女は、いや俺達は成り上がってみせるし、そうなった時こそ俺や彼女の家族、皆でその恩恵に授かるものだろうとお互いの意見が合致した。
藤田は幼少期からその当たり付き棒アイスに馴染みがあったようで、一回だけそのアイスで当たりを引いた事があるらしい。その時は「今お姉ちゃんお腹いっぱいだから、みんなで食べな〜」ってちびども達に大皿に分け与えたのだけど、「こっちの方が大きい」だのやいのやいの言うから「喧嘩すんなよ〜」と嬉しそうに眺めていたそう。
日の暮れた外のベンチに座りながら2人でアイスを食べてると、そんな光景を思い出す藤田。同時に、初星学園に入ってからはアイスを気分転換に食べる(気持ち的な)余裕があまり無かったのだと彼女は思い起こす。日々勉強やバイトに明け暮れ、他方でレッスンやアイドル活動も鳴かず飛ばずで心身共に疲弊していた頃を考えれば、ちょっとした嗜好に手を伸ばす機会が減るのも、さもありなんと言ったところか。
そんな身の上話をする彼女が今、すっかり気持ちの整理が付いて、そして懐かしさすら覚えてしまう棒アイスをあの頃のように美味しく食べる事が出来るのは、自身のプロデューサーがそばにいて、いつでも彼女を信じて手を差し伸べてくれたから。ぽつりと感謝を述べる藤田に『当然の事をしているまでですよ、俺は藤田さんの一番のファンですから』と伝え、少し照れながらにっこりと笑顔で返事をもらう。
そんな会話をしながら、食べ終えたアイスの棒を互いに見比べあって『…簡単には当たりませんね』「ですねぇ」って2人で笑い合いたい。