風の遠位/カゼヒキ
歌 カゼヒキ
曲 早瀬かるる
絵 コットタウン
波と散ってはぐれてる
砂の溜まった堤防へ
駆け出した月の裏
動かない絵画
バターをぬった古いパンを
傘に乗り差し出してみた
柔く攫った波風が
合図を返した 気がした
それはドアノブに手をかけたまま
開けないでいるような
溢れかけた遊び場の
鍵を探さないでいるような
きっと震えている
弾けたガラスや さざめく銀色の糸が
束ねた砂漠で ほどけては消えていく宙に
追いかけた影と はぐれた多くの煉瓦
泳いでは割いた 不慣れな無重力中で
触れてみてるページで あらましを信じて
オルゴールを鳴らして 影が混じらないよう
凌ぐためのテントで 花瓶にさした花
ひとつずつ満たして 私は見ていて
崩れていく夜の方へ
告げなくなっても 消えなくなっても
明かりは遠くて 静まる世界で
灰を流れる船が見えるまで
ビルの灯りをこぼさないように
小さく解れた傷跡もいつかは空に
淡い惑星の上 結べ直せるように
簡単に離れた言葉を集めて
離れないように 残していくように
朝の早い雨に溶けかけた月を
さした花瓶の上 地図が開いていた
白波が立つように
壁に立てかけたままの望遠鏡と
底がほつれかけたカスタードの瓶
窓辺で更けていたあの影も
忘れていく
触れようと残ったままのオリーヴの実
苦しいことばかりが嵩張るのに
蜂蜜を押し込めた23時
忘れていく