「投げキッス」
俺はさ、十年前に見たとあるキャラクターのせいで全てがおかしくなったんだ。
その時から全てが狂ったんだ。
一番自分を狂わせた要因はそいつの"投げキッス"だった。
そいつは普段はおとなしいクセに、ここぞという時は投げキッスを飛ばしてくる魔性の女なんだ。
多感な時期にそれを見たせいで、俺の性癖は投げキッスになった。
だから俺はそいつが一番の推しなんだ。
今は昔ほど熱が無いにしても、一番の推しなのには変わらないんだ。
けど、今年に入ってからそいつと同じくらい好きになったキャラがこはるりなんだ。
こはるりはその推しキャラの"ショックの再来"なんだ。
俺はずっと願ってた。
「こはるりも投げキッスしてくれないかなぁ」って。
そんなことを考えて数か月……。
夢が叶ったんだ。
これまでにこはるりの投げキッスイラストは見たことがある。
だが、立ち絵として使えるとなると話は別だ。
旅はんぺん氏の投げキッスこはるりの差分を見た瞬間、脳内を駆け巡る存在しない記憶━━。
俺は確かに見た。
こはるりが部屋に俺を呼んで、SV2衣装を見せびらかして、アイドルっぽく振る舞ってたんだ。
そして、その流れで、「アイドルといえば投げキッスだよね」って言いだしたんだ。
待ってよ、そんなことされたら、俺は、僕は、私は……。
"恋"、しちゃうじゃん━━。
やめて、やめて。
俺は、こはるりとは今のままでいたいんだ。
この関係のままでいいんだ。
そう思考を駆け巡らせていた時━━。
「ちゅ」
目の前から衝撃波のように飛んでくるこはるりの投げキッス。
俺は顔の右半分と左腕が吹き飛んだ。
もうだめだ。
俺は、もう……。
こはるりがいないと生きていけない体に、なってしまったんだ━━。
「どう?可愛い?」
━━投げキッスっていうのは、自分の容姿に自信があるヤツしかやらないんだよ。
お前は、それを分かってて、俺に投げキッスを飛ばしたのか。
やめてくれ。
勝手に勘違いして傷つきたくなんてごめんだ。
……けど、部屋に呼ばれて、二人っきりで、こんなことしてるってことは、少しは期待してもいいのだろううか。
だから、俺は。
俺は━━。