そして裕子たちは小型上陸用舟艇に乗せられ、沖へ出たわ。沖には赤錆だらけの小さな潜水艇が待っていたの。こんなちんけな潜水艇で海を渡ってきたのかと思うと、その人命軽視の無謀さに胸打たれたわ。ゴムボートから潜水艇の鉄のラウンドした甲板に追い上げられ,丸いハッチに押し込められそうになった瞬間、突然何かがぶつかったような大きな衝撃を受けたの。ちっぽけな潜水艇は大きくローリングし,甲板の丸いハッチから海水が内部に奔流してきたわ。咄嗟に裕子はフリーになっている左脚で思い切りセイルを蹴飛ばしたの。長い脚なので蹴りのストロークは長く,艇のローリングとも同調して縛られたままの2人は艇より相当遠くへ着水することができたんだ。このとき,遠ざかっていく鯨の尾鰭を目撃できたわ。秘密工作員たちは何を考えたのか,あるいはそのように命令されていたのか,沈み行く潜水艇の中にみんな入っていきました。そして,全没して暫くたったとき,突然,大きな爆発音と大きな水柱があがりました。皆艇と運命をともにしたようなのよ。