『孤独のグルメ』(原作・久住昌之、作画・谷口ジロー)は、日本の「グルメ漫画」の概念を根底から覆し、後のグルメ作品や大ヒットドラマに多大な影響を与えた金字塔とも言える作品です。
個人で輸入雑貨商を営む独身男性・井之頭五郎(いのがしら・ごろう)が、仕事の合間にふらりと立ち寄った店で、ただ一人で食事をする様子を淡々と描いています。
全2巻の概要と、それぞれの特徴をまとめました。
ハードボイルドな孤食: 誰にも気兼ねせず、自分のペースで好きなものを自由に食べる。その心理描写が、ハードボイルド小説のモノローグのように展開されます。
「食べる」ことへの真摯さ: 有名なキャッチコピー「時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる」が示す通り、食事を一種の「癒やし」や「救い」として描いています。
各巻の概要
第1巻(1997年発売)
1994年から1996年にかけて『月刊PANJA』などで連載されたエピソードを収録しています。長らくカルト的な人気を誇り、ネットカルチャーでも頻繁に引用される伝説の巻です。
五郎のキャラクター: ドラマ版(松重豊主演)の少しコミカルで柔和な五郎とは異なり、第1巻の五郎はよりハードボイルドで少し神経質な面があります。ヘビースモーカーであり、店の雰囲気や店主の態度に内心で毒づくことも珍しくありません。
名シーンの宝庫: 焼肉を一人で貪る「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」や、店主の横暴な態度にキレて実力行使に出る通称「アームロック事件」など、ネット上でミーム化した強烈な名言・名シーンの多くはこの第1巻に収録されています。
舞台: 山谷のぶた肉いため、秋葉原のカツサンド、新幹線のぞみ号の車内食など、日常の延長線にあるリアルな食が描かれます。
第2巻(2015年発売)
第1巻から実に18年ぶりに発売された続編です。2008年から『週刊SPA!』などで不定期連載されたエピソードを中心に収録されています。
時代の変化の反映: すでにテレビドラマ版が大ヒットしていた時期の刊行であり、五郎の性格もドラマ版に少し引っ張られる形で、やや丸く、親しみやすくなっているのが特徴です。
広がる舞台: 日本国内の地方出張だけでなく、フランス・パリでのアルジェリア料理や、ペルー料理など、海外や多国籍な食文化にも触れています。また、五郎が珍しく入院した際の「病院食」を味わうエピソードなど、シチュエーションの幅が広がっています。